2日目
夜中強風豪雨。予報では昼から回復してくる見込み。
朝は天候を見ながら少し様子見。
その間に朝の行事。
キジ撃ち場と評された場所が2箇所あり。
先客さんは10時過ぎにゆっくり出るとのこと。白鳥に行くので標高を下げるし距離も短いし問題はなさそう。後客1さんは朝日小屋を目指したいものの今日は天候が回復しないと踏んで停滞するという。そうすると3日目はどこに宿泊? テント装備では動けるのは朝日くらいまでだけど。
後客2さんからはどこまで行くのかと問われ、朝日小屋に向かうと話すと自分もだと言う。先に朝日小屋に向かっていった。
自分は中俣からエスケープすること(避難小屋あり)を視野にまずは進んでみることにした。
昨日よりも強い雨足。風も昨日の終盤と同じくらいだ。これが昼には弱まると信じていたのだが…
7時42分天候が特に変わらないので行動時間を考えて出発。この時点では8時間ほどかかると予想していた(コースタイムは11時間強)。
7時47分犬ヶ岳。すぐに後客2さんに追いつく。先に行かせてもらう。
8時11分、北又の水。水には困っていないのでスルー。
8時39分さわがに山。進んだ割に標高が変わらない。黒岩山まで同じ感じ。
9時36分黒岩山。さてここで中俣へのエスケープ。悩むこと5分。時間を考えると山荘まで引き返すことは容易。進むことにする。
10時4分黒岩平。11時24分アヤメ平。
この当たりまでは雨風は強いしガスで視野はないものの何も問題はなかった。動いていれば寒さもあまり感じなかった。すれ違う客も10数人あり皆さんびっしょりではあったがちゃんと行動できていた。しかし聞くと吹上のコルが酷いという。
12時21分木道に雷鳥2羽。残念ながら行き過ぎるのを待っていられず状況でなく、申し訳ないが追いかけるようになってしまった。すまない。
標高をあげるに連れ風の冷たさはは雪山並み、強さも20-30m近いか?
徐々に汗で中が水浸しになりつつあった、が替える服がない(あるにはあるが残しておきたかった)。
12時21分。問題の吹上のコルにたどり着くがまだここはそうでもない。写真を撮る余裕あり。
そこから朝日岳稜線に至るまでがすごかった。体が飛ばされそう。いつでも四つ這いになれるような体で進む。少し行けば朝日岳の稜線の陰に隠れるはず。距離で500mくらいだろうか。登りで足が進まない。飛ばされたら緩いけれども谷底行きだ。なんとか風が弱まるところまでたどり着いて一息。完全に体は冷え切って踏ん張ったことで体力消耗。あと500mあったら動けなくなっていたかも。寒いので岩陰でミドルを追加。そりゃベースとシェルだけではダメだよな。コルに入る前に着とかなきゃ。
あとは稜線背後で朝日岳ピークまで。13時5分到着。とりあえず写真を撮って下った。
もちろん眺望なし。
下りで先行者あり。一人は男性、一人は女性。聞けば男性は偵察がてら小屋から来たとのこと。女性は蓮華温泉から吹上のコルを抜けて来たらしい。あそこを一人で来たのか?
到着したときに、後客2さんのことを伝える。予約はないという。言葉が不自由そうだからーと情報を入れておく。
乾燥するものを干したあとは読書。
あらかた読み終わって談話室を出ると後客2さんが到着していた。目で挨拶されたのでiPhoneに「お疲れ様、大変な雨風でしたねー」と入れて見せる。うんうん頷いてくれた。
握手を交わして別れた。自炊するのだという。言葉は少ないけれども今日あの道を上がってきたのは彼と二人だけ。辛さを分かち合えてよかった。
そうこうするうちに夜の宴会。玄関にはスタッフの特別食卓が設置された。
大将?というあだなのバイトさん(女性です)が、ねじりはちまき(女性です)でオサムプルコギ的なものを作ってふるまい。各食卓にビールのサービス。
清水さんの挨拶・乾杯後は大宴会状態に。関係者40人、お客さん30人とのこと。
ワイン、焼酎、日本酒が飲み放題。自分はワインを頂いてしっかり酔っ払いに。
ここでも出会いあり。4人の単独者が一つのテーブルに相席になった。
隣は50代の男性。千葉の方。明日栂海新道を1日で駆け下って北アルプス全道制覇とのこと。2時出発だと。
向かいは先程朝日岳の下りで一緒になった女性。色白で小顔細身でとても山をやるように見えないが、山スキーもする超経験豊富な方。大先輩でございます。白馬岳に向かうらしい。同じコース。
その右には鹿児島から来て北又から上がってきたというふんわりと柔らかそうな男性。移動で1日!! 大変です。明日は蓮華温泉方面だったかな。
それぞれの話を聞いているだけで楽しく過ごせました。
その後酔っ払いは撤収。ストーブの前で昨日の濡れたものと今日濡れたものを乾かすのに必死になっておりました。
その間に順番にストーブで体を温めに来る人がひっきりなし。
まずは同室の夫婦連れの奥様。富山からとのこと。蓮華温泉から入ってきたらしい。夫婦で20年山に入っているとのこと。「岩場でもガンガン行ってしまう夫について行くしか無いのよー」と言いつつ、「今日の雨風もウィスキーぐいっとやれば寒さも感じないし調子いいよー」的な感じで豪快でございました。明日は雪倉・小蓮華経由で蓮華温泉に降りるそう。ロングです。
さらに栂海新道の現在の管理もしている会の方々。明日は栂海新道で降りるとのこと。おばさまは77歳で現役。私も新道開設時に藪刈りしたのよーとのこと。お姉さまは新道の開設者小野健氏の実像を語ってくれたが、直前に本棚で読んだ自伝とは少し異なる姿に小野氏の人柄を深めた気がした。
昨日今日と栂海新道を上がって来たことを伝え、整備のお礼を告げた。
階段を降りると清水さんの宴会カラオケステージ。大将(くどいが女性)も横で踊る
階段に栂海新道のポスターが。
栂海山荘にも同じものが貼ってあった。
その後、ストーブにあたっていると今度は会の別のおじさまが酔っ払いモードで小野さんのことを語ってくれたが、残念ながら呂律が回っていないのと方言でほとんど分からなかった。でも小野さんを慕っていることを会の活動に誇りを持っているようなことが伝わってきて楽しくうなづかせてもらった。
ストーブには同室のカップルもやってきた。蓮華から入ったらしいが、カメラが動かなくなったという。乾かしても回復しなかったようだ。翌日は雪倉経由で鉱山道で蓮華温泉に降りるという。
地獄のような雨風の吹上のコルと温かい人々との交流・宴会・ストーブ。こんなアップダウンを一日で味わうとたまらない。
これまでいつも一人で黙々と登っていた山行はなんだったのだろう? 価値観が変わる一日だった。
また来年もこの小屋を訪れたいと思った。
夜は人数が多くて暖かい部屋だった。ぐっすり就寝。
この日は上昇下降は1068/536mで距離は13.259km。5時間40分。16分休憩。
最高点の標高: 2309 m
最低点の標高: 1418 m
累積標高(上り): 1342 m
累積標高(下り): -805 m
平均ペース: 2.35 km/h
総所要時間: 05:57:02