日常を離れたところで自然を感じれたらいいなというのがアウトドアを好んでいる理由だけれども、徐々に簡単に(お金を積んだら手に入れられるような)出来てしまうアウトドアには飽きたらなくなって登山に踏み込んだ。
その登山とて、数々のマニュアル(それがないとこんな短期間で登山できるようにはなっていないけれども)・簡単にネットで手に入る記録に満ちあふれている。道具もいくらでも手に入る。それも結局はお金ありきだけれど。
ルートの明らかな登山でも頂上に達して絶景を目にすれば十分すぎるほどの満足を得ることができている。
けれどもルートのあまり定かではない簡単に行けないところがあるとしたら…
そりゃ行ってみたくなるってもんだろう。
「笈ヶ岳」
深田久弥が登ることができず百名山から漏れた山。
近史になって登頂を果たした人が、頂上で数々の経典・仏像を見つけた(つまり修験者が遠い昔に入っていたということ)という山。
もちろん三角点があるので明治期などに測量には入っている山ではあるが、
登山道が開かれておらず藪に覆われており、普通に夏に登るには藪こぎをひたすら繰り返すことでしか登れない山。
唯一新雪でなく残雪のみが藪を覆っていてくれる時期のみに登頂することができるという。
厳密に言えば、新雪で覆われている厳冬期に登頂を果たした猛者(しかもご近所金沢の方=YSHRさん、髭魔人さん、大魔人さん)もいるのではあるが…
数々のコースがあるにはあるのだけれども、最も簡易なスーパー林道自然観察園横から冬瓜山、シリタカ山経由のコースとした。
3時50分にFくんと瀬女の道の駅に集合。
スーパー林道入り口を目指す。料金所前は開通しているがゲートは7時まで開かない。
4時20分頃出発。手前の新岩間温泉への入り口に駐車し自転車で蛇谷自然観察園まで入る。ヘッ電つけて4kmの道のり。気温は4−5度ほどで寒かったが歩く苦労を考えれば大したことではない。
準備中 隣に一台愛知ナンバーが泊まっていたが同じく笈ケ岳を目指している方だった
観察園に到着して準備。同じ時間帯に夫婦1組、親子連れ1組が出発。4時40分。周りは十分に明るい。
まずは川沿いに1.5kmほどの歩行。トンネル2個、渡渉1.5個ほど。小さな小屋横から登り開始。登り口にテント一張あり。
登りは突然の急登。
そこで最初のミス。ロープ上縁から左に道があったのだが、まっすぐクライミング。何とかよじ登ったら左から巻きの道が…
いきなり無駄に体力消耗。ここから稜線沿いに水平距離で1km、垂直で650mほどの登り。夏道のように十分なトレースはあるが周りから枝がいっぱいでていて払いながら進む。
登山道はないと言いつつも、ピンクのリボンはいたるところにあって、ルートを外すことはない。
逆に言えば、普通の登山と特に変わりはないと言うことか。
山毛欅尾山からつながる主稜線。7時50分。帰りは体力がなくなることを予想して、いきは冬瓜山・シリタカ山頂上経由、帰りは冬瓜平経由とした。
ここからは一部稜線に雪が残っているので雪の上の歩行は快適、しかし雪が切れると藪こぎが強烈。ジャングル状態です。
稜線から白山方面 雪が残っている
冬瓜山頂上直前のほぼ垂直の登りのあとは頂上へ。8時18分。素晴らしい眺望。
この直後にナイフリッジの切れたった稜線があったのだろうけれども右下の藪を巻いてシリタカ山方面への稜線に降りる。
ここからは雪の稜線でまだ締まっていたのでアイゼン装着 快適な歩行。
シリタカ山 9時6分
シリタカ山 仙人窟岳方面の稜線との切れ目に北アルプスが見える 仙人窟岳 気持ちのよい平原で ピッケルで北アルプスを破壊!?
このころになると日差しで雪が緩んできた。
一旦80mほど下って、仙人窟岳からの稜線に登り返す。
登り返す頂点に岩場があるのだがトレース通り、左に巻いて直登する。ここはまだ日陰で雪が締まっているのでアイゼンが活躍。
登り切ると雪が藪で切れている。藪を数mこぐと稜線の東側(岐阜側)の雪の残る斜面にでる。
東側にでたところ 10時10分 出た瞬間にFくんが右に向かう そちらは仙人窟岳方面だよー
ここからは小さな登り返しが数回あって笈ケ岳頂上へ。写真で見えているのは小笈ヶ岳のピーク。
そして頂上へ。10時43分。約6時間。遠いなー。
日差しが暑い。全面快晴。
東側斜面側に体を起こすと、斜面の雪から天然のクーラーが冷風を送ってくれる。
頂上で昼食。コーヒーを飲む。
親子連れの方としばしお話。小松から来たとのこと父はヒマラヤにも行ったことがあるとのことで登山歴は40年超とのこと。息子さんは22歳の大学院生。
40年越しの初登頂とのことで嬉しそうであった。
ほどなくソロの方が一人。写真を撮影してすぐに降りていった。
11時29分出発。
帰りは冬瓜平経由。降りるポイントは行きに確認済。
そこに出るためのコルからの登りがきつかった。かなりばてばて。
ポイントで12時25分ころ。この時間帯にシリタカ山から頂上を目指す3人組がいたが、日没に間に合うのだろうか?
降りるところ 一番低いところはいわゆる清水平か 左に冬瓜平に向かうトレースがある
地図から読み取ると1450mの等高線沿いに進めば間違いないはず。しかし途中に大きく谷があり雪・岩のデブリ多数。やや高度を下げるのもやむなくそそくさと通過。
冬瓜平はテントに最適。
ここからは地図を見ながら位置を確認して冬瓜山と山毛欅尾山との間の稜線に出る。13時10分ころ。
ここからは雪もなくなり、ひたすら下り。
膝に来ている状態での下り(遠心性運動)はかなりキツイ。弱音はきつつ休みつつ、何とか川岸まで。15時26分。
水が切れていたため渡渉時に川水を飲もうかと思ったが濁っていて断念。約1.5kmの川沿いを歩いて観察園へ建物へ。15時45分頃。
観察園の前の水道で喉を潤した。
周りは車で来ている人だらけ。こちらは汗だくぼろぼろの二人。
ここから自転車で車まで。3kmほどは快適。残り1kmは急な勾配で自転車を引いて歩く。車到着16時30分頃。行動時間12時間超。休憩時間は合計1.5時間ほどか。
天領で温泉につかり、帰り道で夕食を食べて終了。
完全に使い果たした1日だった。
飯を食べながら、「もう一度の笈ケ岳はあるか?」と話をしたが、「もうない」ということで一致。それくらい辛かった。
個人的には中宮温泉スキー場跡から中宮山を経由して大笠山・千丈平に行くのはひとつの夢ではあるのだけれども、いったん封印とした。
雪のテン泊の経験(もちろん残雪期)を少し積んでからだろう。
GPS記録は行きの分がとびとび(一部修正)、最後の小笈ケ岳手前でなぜかログが終了している。帰りは完全に記録されている。
最高点の標高: 1786 m
最低点の標高: 518 m
累積標高(上り): 1637 m
累積標高(下り): -1691 m
平均ペース: 2.27 km/h
総所要時間: 11:44:12