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Garmin inReach Miniを使うようになって1年経った

2019年2月末に導入して約1年。興味ある人の人柱的ではあるが、Garmin inReach miniの使用経過を記す。

長文注意。

<本体>

Garminの小型GPS機器の半分くらいの大きさ。

画面は小さく最低限の表示になっている。

ボタン操作は固くて、軽快に…というわけにはいかない。文字入力なんて考えないほうがいい。

SOSボタンが右側面にある。硬いカバーに覆われているため誤動作はしないだろう。

強度的には問題なさそうだが、すでに液晶面に小さなキズが入ってしまった。外付けにするのはためらわれる。

が、外付けにしないと衛星回線やGPSを拾いにくい。

 

<収納・操作>

衛星電波を拾い易いようにザックの天頂部分、つまり雨蓋内に入れておくほうが良いだろう。

ウェストポーチでは衛星回線を拾っていないことがあった。体が遮蔽することがあるようだ。

時々閲覧したいこともあり、ショルダーにかけていることが多い。

雨蓋内に入れておくと操作が煩雑になるが、後述するように携帯アプリから全ての機能が使えるし、対応するGarminの腕時計からも操作ができる。

夏場は主に腕時計のGarmin instinctで操作をしていた。

冬季になったら時計は操作しにくいので直接本機を操作する方がよい。ほとんどはスタートとピークとゴール通達の3回の操作に過ぎない。

 

<位置情報の発信について>

契約の範囲で最も頻回に送信できる10分おきにGPS位置を自動発信する設定にしてある。

この1年間の65山行で2348ポイントを発信した。約391時間分。1回の山行につき平均36回送信。

発信された位置を地図で確認すると、大きく位置がずれていることはない。が、谷深いところでは送信できていないこともある。

10分という間隔は、徒歩の場合は、緩やかな登りでは7-800m、急な登りでは4-500mの水平距離になる。下りではそれぞれ1km、7-800mくらいのようだ。

skiで滑走している場合は10分で1.5-2kmくらいは移動できてしまう。

が、当然行動停止すれば、その位置を発信し続ける。

遭難と同時に機器が停止する、もしくは送受信不能な場所に嵌るようなアクシデントに見舞われない限りは遭難位置の発信としては十分か。

問題は位置情報の閲覧。

緯度経度で送るわけではない。web上の地図に表示されるのである。

この画面にアクセスできる人は誰でもメール送信と位置情報をリクエストをすることができる。

メール送信画面。

位置情報リクエスト画面。

ITリテラシーの低い妻は、「えっとどの画面開くんだっけ?」から始まったので私を助けてくれないかもしれない(汗)。

なので、ヤマレコの登山届の個人情報のところにはこのwebページを貼り付けるようにした。

 

ちなみにヤマコレのアプリで記録をしていると、自分の位置情報を送ることができる。

ただし携帯回線がつながっている間だけは。

 

<メールのやり取りについて>

・preset message

3つ設定できる。出発時、ピーク到達時、下山時に送る内容に設定してある。同時に送信時の位置も知らせるようになっている。

妻にこの3箇所でメールを送ると約束したのでそうしてある。

山行では上記の3地点で毎回送信している。自分の契約では何回送っても無料。

送信の手間は少ない。腕時計のGarmin instinctからだと時計表示状態からボタンを5プッシュで送れる。

衛星回線を掴んでいないと送信が4-5分遅れることがある。衛星回線を掴むと「フニャ」っと柔らかい音で送信したことを知らせてくれる。

現在のところは妻の心の安定に大きく寄与している。

位置が表示された地図を見ればどこの山にいるか一目瞭然だ。

 

・quick text message

20個設定できる。ほとんどdefaultにしてある。1度試しただけである。

非常時に送る内容にすればよいと思っている。

特に携帯の電源を温存したい場合に(アプリを使わずとも)送りたい情報に有用と思っている。

例えば、「安全だがビバークする」とか「怪我して動けないけど命は大丈夫」とか。

位置情報を同時に送れる。

1ヶ月に40件までは無料(受信も含めて)。それ以降は1件につき1USドル。使うことはまずないので気にならない。

使うとしたら遭難して何らかのやり取りを頻回に行った場合だろう。やむなし。

 

ちなみに携帯回線がつながるエリアであれば、もちろんLINEで十分である。LINEで位置情報を送ることも極めて簡単である。

 

・携帯電話のアプリ経由のメール送信

本体の操作しにくいボタンでメールを作ることは可能だが、大変。しかもアルファベット・記号・数字しか使えない。

bluetoothで携帯電話と接続して、携帯上のアプリ「Garmin Earthmate」から文字入力できる。日本語も可能(本体では文字化けで表示)。

北ノ俣岳の稜線で雪上テン泊した時は、携帯回線が不安定だったので衛星経由でテント位置を知らせるメールを送った。

凍えるテントの中での妻からの返信にはほっこりした。

このアプリはルート管理にも使えるし電子コンパスも付いている。

残念なのは地図が国土地理院ではないこと。

 

ちなみにこのアプリを行動中に開いたことはない。GPS64を別に使っていて、現在地確認は圧倒的に使いやすい。特に雪の中では。

 

<バッテリー>

7-8時間程度の通常の山行を終わってみるとだいたい電源の15%ほどを消費していた。

13-4時間使うと3-40%使用している。

最大で50時間ほど連続発信し続けるという計算になる。

1日10時間行動なら(移動しない就寝中電源を落とせば)5日間保つということか。

もちろんバッテリーと充電コードも持っているので充電の上追加使用も可能。

自分の身を護るためには就寝中に充電すべきだろう。

なお、バッテリーは内蔵式である。取り外せない。経年劣化する。バッテリーがヘタったら(交換サービスでもあればいいが)機器の寿命となる。

 

<ログ機能>

位置情報発信を以てログとしていると思われる。本体をPCにつないでログを吐き出させることができない。web上の地図の軌跡をダウンロードすることでGPXファイルを得ることができる。

10分ごとの記録なので行動のログとしてはあまり意味をなさない。

 

<ナビゲート機能>

webもしくはアプリからGPXデータを登録することができる。

inReachが掴む位置情報とそのデータで携帯上でナビゲートが可能になる。

本体自体にもナビゲート画面が表示されるが、そもそも地図が表示されないので有用とは言えない。

使ったことがない。

ここに電力を消費するのはもったいないので使わない機能だろう。

 

<コストパフォーマンス>

命の値段は計算できないが、この機器のランニングコストを示す。

レクリエーションプランの詳細

無制限のSOS (救助費用の保険も込み)

40件のテキストメッセージ/月

無制限のプリセットメッセージ(Webサイトで設定された定義済みメッセージ)

10分間以上の間隔での無制限のトラッキング

月間プランの許容数である40件のテキストメッセージを超える各テキストメッセージに対して$1 USDの超過請求が発生します。

テキストメッセージには、自由な形式の送信メッセージと受信メッセージが含まれます。

これで月24.95USドルである。

仮に1ドル100円とすると、1山行あたり460円(3回のメッセージ+平均36回の位置送信)。

携帯がつながらない範囲は平均36回の位置送信のうち半分くらいだろうから、これは安いのか高いのか?

個人の受け取り方だろう。

 

<inReachはビーコンの代わりになるのか?>

ビーコンは即時性が大事。inReachは即時性を求めていない。

その場で携帯回線がつながる人はinReachの場所を見ることができるが、そもそも携帯回線がつながらない場所を想定している機器である。

目の前で埋まった場合は、やはりビーコンを用いるしかない。

ので、ビーコンは持ち歩いている。

inReachは埋まって死んでしまった人を探すツールである。

もしくは遭難して動けなくなった人を探すツールである。

 

<ココヘリの代わりになるのか?>

ココヘリの親機(捜索用の端末)を持ち歩いていないと仮定する。そもそも親機は家族もしくはヘリが持っていると想定した商品である。パーティ内で使うことを想定していない。

ココヘリは数kmの範囲で捜索可能な電波である。電波の届かない場所に遭難したら見つけられない。

inReachは衛星回線で位置情報を発信する。GPSをが届かなければ位置情報を得ることができないし衛星回線が届かなければ見つけられない。

どっちもどっちだろう。

 

ココヘリの親機子機をパーティの全員がそれぞれ持ち歩いていたら?

強力なビーコンの代わりになるだろう。

しかしinReachはそのような使い方にはならない。

 

<結局のところinReachって何?>

現在の行動位置確認には専用のGPS機器を用いるほうがいい。実際にGPSMAP64scjを持ち歩いている。ナビゲーションの役には立たない。

携帯回線のつながる範囲なら、携帯のLINEでコミュケーションするほうがいい。簡単早い。

おなじく携帯回線のつながる範囲なら、自分の位置を知らせることは携帯の方が簡単早い。

雪崩で埋まっても、仲間はinReachが発する位置情報にはアクセスし難い。そもそも地図で教えてもらっても埋まった場所は半径50mくらいでしか特定できないだろう。捜索即時性はない。

 

つまりは

携帯回線がつながらず、かつ衛星回線がつかめる場所で (大体地球上どこでも大丈夫だろう)

位置情報をネットで公開すること 

メール的なものでまったりとコミュニケーションすること

自分の身を守る道具

 

携帯電波に溢れている一般登山道しか行かない人には全く不要だが、

人里離れた山奥にソロで行くことがあるような放浪にはとても有用なツールであろう。

1 comment for “Garmin inReach Miniを使うようになって1年経った

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