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レスキュー装備の覚書

主に山スキーでの使用を想定した緊急懸垂セット・クレバスレスキューセットをアップデートした。

参考としたページは山スキーロープワーク考察、そしてIMPメンバーでガイド資格を持っているkuma-sanの書いたBCスキーヤー・ボーダーのための携行ロープ考察、petzlのスキーツーリングガイド(ただしヨーロッパの氷河のあるアルプスを想定したもので日本の環境には合わないところが多い)、登山リーダー向けロープワーク実践テキストあたり。
最後の資料はものすごくボリュームがあるが、現在の日本のガイドがどのように指導しているのかが良く分かり勉強になる。

写真のごとく、ハーネス以外は引き出せるようにしてスタッフバック内に収納。ロープがやや過剰(長い)か。これで、1193g。重いと考えるか軽いと考えるか…

中身は

ロープ:Beal back up line φ5mm x 30m (21g/m = 630g)
アッセンダー:Petzl Tibloc (旧)
ロック機能付きプーリー:Petzl MicroTraction
プーリー付カラビナ:Edelrid Axiom slider
スリング:Dyneema sling 180cm、他に常時ザックにぶら下げている120cmスリング2本。支点構築用。
プルージックコード:Edelweiss ケブラーパワーコードで作ったφ5.5mm kevlar rope sling
下降器:Edelrid Mago8
その他:locking carabiners 4枚

ロープに関して。
Petzlのクレバスレスキューキットに入っているφ6mmのPetzl rad line ropeは実質7mmほどの径であり、kuma-sanの記載にもある通り、Edelrid microjulで問題なく懸垂下降可能であった(源次郎尾根で実証済み、ただしダブルで使用)。

しかしPetzl rad lineは日本ではなかなか手に入りにくい(海外通販で購入は簡単)。
日本での選択肢はfinetrakのフローティングロープあたりか。芯がダイニーマ。
その他にもこういう用途で作られているロープは各社が出している。微妙に伸びるものらしい。edelrid RAP line protect pro dryとか。ただし重い(30g/m)し冗長。それなら軽いdynamic ropeを担いでいくよ。
より軽量で市場に出回っていて手に入りやすい5mm径のBeal back up lineを買った。

Beal back lineの商品の説明

通常径のロープの回収用、折り返してダブルでの懸垂、荷上げが記載されている。
折り返してmicrojulで懸垂下降を試してみたがfrictionがほとんどない。ちと不安。
別の下降器が必要だと考えた。

下降器について。
Mago8はどちらかというとキャニオニング系のエイト環のようだが超軽量で細径に対応している。
ただし説明書には対応ロープ径は6mm~となっている。

使用ロープはφ5mmなので試してみるしかない。
左はφ5.5mmのケブラースリングでバックアップしたもの。右はバックアップなし。

バックアップありは安定。
バックアップ無しだと少しロープが流れやすい。説明書にあるようにfrictionを増すようにツノにかけてみた。亀一つモードはちょうどよい感じ。亀二つモードはロープが流れにくくなり降りにくい。ダブルだからだろう。
いわゆるチョイがけもしてみたが、これは十分なfrictionが得られなかった。
エイト環なのでロープにキンクができてしまうが、緊急使用ならこれで良いと思った。

ちなみにこのMago8はセカンドビレイも出来る(下写真左、中央の2列の楕円ホールを使用)となっているが、後続を支えるに足る支持力はなかった。使うならエイト環として取り回すべきだろう(下写真中右)。
使用ロープはセカンドビレイの用途でない(全く伸びない)のでそういう使用は考えないこととする。

懸垂下降から登り返す場合、ケブラーコードなどを2本用いてマッシャーなどで登り返すしかない。これは検討を要する。できるにこしたことはない。
細径ロープ(φ5.5mmケブラーロープ)を登り返す検証を登山教室Timtamさんがしている。

肝心のクレバスレスキュー用途・haulingも試してみた。1/3システム。

どの機材も能書き的には5mm径のロープには対応しないのだが、問題無く引き上げられた。
軽量化のキモはAxiom slider。プーリーを一つ省略できた。